ホテル業界は、競争が激化するなかで、いかにして利益を最大化するかが経営者の課題です。新しい経営スタイルや、宿泊予約管理システムの導入は大きなメリットをもたらします。宿泊施設の規模やターゲットとする客層によって、最適なシステムを選び出すことが重要です。また、コスト削減のためには、宿泊予約管理のフリーソフトを活用するのも一つの手です。このページではホテルの収益性を高めるための方法を解説しています。

ビジネスホテルが儲かる仕組みとは
「ホテルはコストばかりかかり、儲からない」といわれていたのは、過去のこと。
現在は、宿泊に特化したビジネスホテルが儲かる仕組みを構築しています。
ここでは、ビジネスホテルの儲かる仕組みについて解説します。
また、ホテル・旅館・民宿経営の効率化の一例として、宿泊予約管理システムについてもご紹介します。
ホテル・旅館・民宿で重要なのが、新規顧客の獲得とその顧客のリピーター化です。
新規顧客の獲得には、以下のような取り組みが必要です。
①ホテル・旅館・民宿の広告を出すこと
②自社でネット予約を始めること
③旅行代理店と提携すること
④大手ネット予約サイトと提携すること
⑤各種学校と提携すること
⑥SNSを使った情報発信
こうしたことを実行するには、きちんとした予約管理はもちろんのこと、営業力なども必要になります。
新規顧客の獲得と同時並行で進めなければならないのが、リピーターの獲得です。リピーターの獲得には顧客の管理と分析が重要です。
顧客がサラリーマンなのか自営業なのか、家族で来たのか会社の人と来たのかにより、提供するサービス内容が異なります。
また、ホテル・旅館・民宿の利用頻度を正確に把握することで、DMを送ったりSNSを使ったりして、顧客に訴求することが可能です。
ホテル・旅館・民宿・ペンション・料亭・飲食店の顧客管理のフリーソフトです。
宿泊業者の予約管理、フロント会計、売掛金管理、顧客管理、宿泊者情報の管理、日別リスト・稼働率の計算、インターネットでの宿泊予約システム、空き室の検索、電子メニューオーダー、勤務シフト管理などができます。
シティホテルからビジネスホテルへビジネスモデルの転換
ビジネスホテルのように、宿泊に特化したビジネスモデルが日本で広まったのは2000年代初頭のことです。
それ以前、「シティホテル」とよばれる一般的なホテルは宿泊・宴会・レストランの3部門で構成されていました。
宿泊はもちろん、その地にやってくる宿泊客をターゲットにしていますが、宴会とレストランのターゲットは地元の人が中心です。
宴会は、地元企業のパーティなどを引き受け、レストランはホテル周辺で働く人や地元の富裕層が主な顧客です。
バブルがはじけると、宴会とレストラン部門は儲からなくなり、客層が異なる3つの部門を抱えるシティホテルは採算が取れなくなってしまったのです。
もともと、ホテルは「儲からないビジネス」といわれていました。
その理由は次の3つにありました。
・人件費がかかる
・建物の建設費用や維持費がかかる
・日本の都市部は地価が高い
ビジネスホテルが儲かる理由
その後、アメリカから宿泊に特化したビジネスホテルという業態が、日本にも導入されます。
宿泊は宴会や飲食と異なり、収益性の高いビジネスです。
ビジネスホテルの収益モデルについて、詳しくご説明します。
宿泊は人件費がかからず、稼働率が上がると収益率がアップする
一つ目の理由は、宴会や飲食と比べて人件費がかからないからです。
宴会や飲食は利用する人が増えるほど、運営側のスタッフの人数も多く必要になります。
しかし、宿泊ビジネスは、宿泊客が増えても人件費などのコストは変わりません。
稼働率が6割でも8割でもコストはさほど変わらないため、稼働率が上がると利益率も上がります。
変動相場制を導入してホテル側が価格を決める
現在、多くのビジネスホテルの宿泊料金は「変動相場制」が取り入れられています。
宿泊予約数によってホテルが料金の設定を日々変えているのです。
以前の日本のホテルには、宿泊の基準となる価格はありましたが、一定の時刻を過ぎるとどんどん値引きする状況でした。
出張に来ているビジネスマンは、夜になってホテルが値引きする時間帯になった頃を見計らって電話をし、予約を入れていました。
ホテルは年間を通じておおよその稼働率が決まっています。
一般的に2・8月は閑散期で、正月や4月、秋は繁忙期といわれています。
今ではホテルの稼働率を解析できるソフトもあり、宿泊料金の設定や年間の収支予測を立てることが可能です。
「ホテルは儲からないビジネスといわれていた」と言われていましたが、現在は都心でホテルを建てて不動産投資をしたいと考える不動産投資家がたくさんいます。
それは、人の動きに合わせて宿泊料金を設定し、ホテルの稼働率や宿泊単価を以前よりも上げることができているからです。
ネットを活用した運営
現在、多くのビジネスホテルでは、宿泊予約をネットで受け付けて、管理しています。
集客もネットを活用しています。ネットの活用は、人件費の抑制にもつながっています。
全国に多くのホテルを抱える大手ビジネスホテルチェーンでは、予約電話を受けるセンターを設置し、どの系列ホテルに電話をかけてもセンターで受けるようになっています。
電話をかけたホテルに空室がなくても、近隣の系列ホテルで空きがあれば、すぐに案内ができます。
ビジネスホテルの新たな経営スタイル
ビジネスホテルの高い収益性が注目されるようになると、ホテル・旅館業界以外からもビジネスホテルの経営に参画する企業が現れています。
それは「自社の土地に建物を建て、ホテルの運営会社に貸す」というスタイルです。
建物オーナーとしてのホテル業
不動産投資を行う会社は自社の土地に建物を建て、さまざまな用途で貸し出します。
主な用途は以下のとおりです。
・マンション
・オフィス
・店舗
・ホテル
ホテルはもっとも儲からないといわれていました。
しかし近年では、ビジネスホテルのような宿泊に特化することによって、今では収益性の高い業態と考えられています。
不動産のオーナーが建物を建てたあと、ビジネスホテルとして収益を上げる場合は建物を丸ごとホテル運営会社に貸し出します。
この点が、マンションやオフィス、店舗など1室ごとに貸し出す場合とは異なります。
ホテルの建物オーナーが収益を出せる仕組み
ホテルの建物オーナーが収益を出せるのは、建物を一棟丸ごと運営会社に貸し出すからといえます。
ホテルの稼働率や空室率に関係なく、一定の賃料を支払うからです。
ただし、賃料を固定するとホテルの収益が増えてもオーナーの儲けは増えないため、賃料に固定分と変動分を設定し、契約を結ぶことが多いです。
一方、オフィスやマンション、店舗の場合、入居者の入れ替わりがあって満室にするのは難しいです。
また、オフィスとして貸し出す場合、共用部分は賃料の対象外となるため、建物全体の収益を考えると、丸ごと貸し出すホテルのほうが高い収益性を得られる可能性があります。
ホテルや旅館・民宿の予約業務を効率化して収益率アップの第一歩を
ホテルや旅館・民宿の運営は人手がかかるために、収益性が低いといわれてきました。
マンパワーをかけるべきところと、かけなくてもよいところを見極め、効率化を進めることで収益性を上げることができます。
その一歩として、まずは宿泊予約管理の効率化を進めてみましょう。
エクセルを活用したオンライン予約システム
表計算ソフト「エクセル」で宿泊予約表のテンプレートを作成し、オンラインで運用できると、予約を入れたいお客さんがアクセスして入力することが可能になります。
難しいネットワークの知識がない、自分でサーバー環境を整える余裕がないといった場合には、クラウドサーバーをする方法をおすすめします。
エクセルでテンプレートを作成し、そのファイルをGoogleドライブなどのクラウドにアップすれば、お客さんや従業員がアクセスして入力・管理ができるようになります。
ただし、以下のような点に注意しましょう。
・お客さんが入力箇所以外の部分をさわらないように、セルの入力保護などを行う
・定期的にバックアップを取る
ネット上で公開されているフリーのテンプレートを活用すると便利
宿泊日や宿泊人数、チェックイン予定時刻、予約受付担当者など、必要事項を盛り込んだ宿泊予約表のテンプレートをはじめから作成するのは時間がかかります。
インターネット上には、無料でダウンロードできるエクセルテンプレートがたくさんあるので、活用しましょう。
その際、テンプレートをそのまま使うのではなく、ご自身のホテル・旅館・民宿に合わせてカスタマイズすると、より使い勝手のいいテンプレートになります。
無料でダウンロードできるエクセルテンプレートは、テンプレートをたくさん集めたサイトなどで見つけることができます。
ホテル・旅館・民宿業界に特化したテンプレートもあれば、業界に関係なく使える汎用性のあるテンプレートもあります。
最初からぴったりのテンプレートを見つけるのは難しいので、いくつかダウンロードし、カスタマイズしながら使いやすい宿泊予約表をつくりあげましょう。
VBAを使って宿泊予約管理システムをつくる
エクセルにVBAというプログラム言語を使うと、たとえば以下のような機能を備えた宿泊予約管理システムをつくることができます。
・空いている予約枠に予約が完了したら「受け付けました」のメッセージを出す
・埋まっている予約枠に予約を入れようとすると「予約が埋まっています」のメッセージを出す
・予約のキャンセルができる
・部屋ごとの予約状況が確認できる
このような機能を持たせるには関数を作成し、エクセルのシートに関数を実行させるボタンを設置します。
ホテルや旅館、民宿なら、VBAを使って予約管理と予約のブッキング防止の機能があるシステムがつくれます。
プログラムに関する知識があれば、VBAとエクセルを活用した宿泊予約管理システムの構築は難しくありません。
書籍で学べるほか、VBAを使った宿泊予約管理システムの作り方を紹介しているサイトもあります。
周囲に詳しい人がいない場合は、システムを制作してくれる外注業者もあるので、相談してみるとよいでしょう。
宿泊予約管理システム導入のメリットとは
宿泊予約管理システムは、ホテルや宿泊施設が予約情報を効率的に管理するためのツールです。これにより、施設運営がスムーズになり、顧客満足度が向上します。以下では、このシステムを導入することで得られる具体的なメリットについて紹介します。
ダブルブッキングのリスクをゼロに
宿泊予約管理システム導入の最も顕著なメリットの一つが、ダブルブッキングの防止です。従来の電話予約や手書きの管理方法では、予約情報の入力ミスや更新の遅れが発生しがちでした。これらのミスは、そのままダブルブッキングという重大な問題を引き起こします。しかし、システムの導入により、全ての予約がリアルタイムで更新されるため、空室状況の把握が正確かつ迅速に行えます。その結果、顧客に不便や不快感を与えることなく、予約管理をスムーズに進められます。
フロント・予約業務の効率化でスタッフの負担軽減
宿泊予約管理システムは、フロント業務や予約管理業務を自動化し、大幅な効率化を図ります。具体的には、チェックイン・チェックアウトの手続きがスピーディーになり、清算業務もシステム経由で簡単に済ませられます。これにより、スタッフの業務負荷が大幅に軽減され、人件費の削減が可能となります。また、自動通知機能やリマインダー機能により、顧客へのフォローアップが確実かつタイムリーに実施できるため、顧客満足度の向上にもつながります。
マーケティング戦略の強化
宿泊予約管理システムを活用することで、効果的なマーケティング戦略を展開することが可能です。システムには顧客の宿泊履歴や利用頻度、さらには好みや特別なリクエストなどの情報が蓄積されます。これらのデータを元に顧客を詳細に分類し、それぞれのグループに対してパーソナライズされた特典やプロモーションを配信することができます。これにより、リピーターの増加や新規顧客の獲得が期待でき、施設の稼働率向上にも寄与します。
データ分析による経営改善
さらに、宿泊予約管理システムには強力な分析機能が搭載されている場合が多いです。これにより、売上や予約傾向、ピークタイムなどのデータを簡単に視覚化し、経営戦略の見直しや新たな戦略の立案に役立てることができます。データ駆動型経営を実践することで、施設運営の最適化と持続的な成長を図ることができます。
顧客対応のカスタマイズ
システムにより顧客情報の一元管理が可能になることで、よりパーソナライズされたサービス提供が実現します。特別なリクエストや好みを事前に把握し準備することで、顧客一人ひとりに合わせた温かみのある対応が可能になります。これにより、顧客満足度が向上し、口コミや評価サイトでの高評価を得ることができます。
ビジネスの全体最適化
宿泊予約管理システムの導入により、業務全体の効率が上がり、経営資源を最適に配分することが可能です。各部門が連携しベストのサービスを提供できる環境が整うことで、総合的な競争力のアップにつながります。
施設の規模や客層で最適なシステムを選ぶ
適切な宿泊予約管理システムを選定するためには、まず施設の規模や利用客層をしっかりと把握することが重要です。宿泊施設の運営において、適切な予約管理システムの選択は、その効率性や顧客満足度に大きな影響を与えることがあります。
小規模なホテルに向けた選び方
例えば、客室規模が小さく、宿泊予約をシンプルに一元管理できることが求められるホテルの場合、基本的な機能を備えた予約管理システムが最適です。このようなシステムは、導入や運用が簡単で、費用も抑えることができるため、初めて導入する場合にも適しています。また、日々の業務がさほど複雑でない小規模施設では、予約状況、顧客情報、支払い管理などの基本機能が揃っていれば十分かもしれません。
多機能システムの導入が適する場合
一方、複数のシステムを併用しているために画面の切り替えやデータ連携が煩雑になっている場合や、予約管理業務が複雑化しているホテルであれば、多機能な宿泊予約管理システムへの切り替えを検討する価値があります。たとえば、オンライン予約、フロントデスク管理、顧客関係管理(CRM)、会計機能、レポーティング機能などを統合したシステムを導入することで、業務の効率化や顧客対応の向上が期待できます。
大規模ホテルにおける予約管理システムの要件
大規模なホテルにおいては、さらに高度なシステムが求められます。たとえば、複数の販売チャネル(OTA、公式サイト、旅行代理店など)からの予約を管理し、在庫や料金の調整をリアルタイムで行える機能が必要です。また、多国籍の客層をターゲットにする場合、多言語対応や多通貨対応も重要な要件となります。さらに、顧客データ分析やマーケティングオートメーション機能などを活用し、顧客満足度を高める戦略的な運営も可能になるでしょう。
宿泊予約管理システムの選定はホテルの規模や客層、運営方針に大きく影響されます。単に料金や導入のしやすさだけでなく、現実の運営ニーズや将来的な拡張性を考慮し、最適なシステムを選ぶことが肝要です。どのようなシステムが最適かを理解するためには、まず自施設の運営状況やニーズをしっかりと把握し、それに基づいて選定を進めることが大切です。
宿泊予約管理のフリーソフトも
予約業務に加え、平日・休日の宿泊価格変動やさまざまな宿泊プランの設定、明細書の印刷など、さまざまな機能を備えた宿泊予約管理のソフトウェアもあります。
宿泊予約の管理と他の作業を連動させたい場合は、ソフトウェアを活用するのもおすすめです。
エクセルで動くものやAccessで動くものなど、必要となる環境がソフトウェアごとに異なるので、インターネットからダウンロードする際には必要な環境をチェックしましょう。
宿泊予約管理ができるフリーソフトはいくつかありますが、機能が高度になると有料となっています。しかし、フリーソフトよりも有料ソフトのほうがいい、とは一概には言えません。ソフトで行いたい業務によってフリーソフトのほうが適していることもあります。
有料ソフトも体験版を無料でダウンロードできることが多いので、フリーソフトや有料ソフトの体験版を複数ダウンロードし、使い勝手を比較して検討します。
エクセルのテンプレートとクラウドサービスを活用し、シンプルな宿泊予約管理システムを使うのか、専用のソフトウェアを導入するのかは、ホテル・旅館・民宿の規模や使いたい機能、予算、周囲にいる人材などによって選択肢が変わります。十分に検討して何を導入するのか決めましょう。