農業における家族経営のデメリットと改善策を詳しく紹介!

農業経営・農業会計



家族経営は、多くの農業従事者にとって基本的な経営形態ですが、その一方で様々なデメリットも抱えています。家族間のトラブルや資金管理の難しさ、そして効率の悪さなどが挙げられます。これらの課題を解決するためには、農業会計や農業簿記が役立ちます。また、フリーソフトを活用することで経営の「見える化」による改善も可能です。このページでは、変わりつつある家族農業経営のあり方について解説しています。

農業簿記のフリーソフト、エクセル農業簿記
このページでは、農業簿記のフリーソフト、エクセル農業簿記を紹介しています。  ・農業簿記のフリーソフト・アプリの紹介  ・農業会計のフリーソフト・エクセルテンプレートを紹介  ・農業経営のフリーソフト・エクセルテンプレートの紹介 ...



農業における家族経営はデメリットが大きい

日本国内において家族経営で農業を営む割合は、97.6%(※1)と、ほぼすべての農家が家族経営をしています。
家族経営は、日本のみならずEUやアメリカなども95%を超えており、農業は家族経営が一般的と考えられます。

これまでの伝統的な家族農業経営の枠組みは、血縁家族を中心とする農村家族を「農家」とみなし、土地所有や農協組合委員の単位とされてきました。
家族農業経営は、以下のような要素を持っているのが特徴です。
・家計と経営が結びついている
・経営主が構成員と血縁関係・婚姻関係
・経営主を含む家族が経営資本を出資
・経営主を含む家族が農業労働をおこなっている
・経営の所有と管理が世代で継承されてきた
・家族が農場に住んでいる

農業における家族経営が主流になっている理由は、気象や価格変動による損失を軽減できたり、外部人員を必要としないため人件費を抑え、柔軟に臨機応変な対応ができるといったメリットがあるからです。
また、気心の知れた人同士あうんの呼吸で運営できる点もメリットでしょう。

※1:「2015年農林業センサス」/農林水産省

家族経営のリスク

企業的経営の側面を持ち合わせていない農家が多く、実は、以下のようなデメリットが挙げられます。

農業を家族経営するデメリット
・金銭面や労働条件があいまいで、不満が生じやすい
・家計と経営の境目があいまいでどんぶり勘定になりがち
・家族労働に頼り、事業拡大や成長のための設備投資の機会を見逃しやすい
・労働生産性の低下を招き、事業拡大が難しくなり、後継者の農業離れにつながる

この記事を読んでいる方のなかには、すでに上記のようなデメリットを実感しているのではないでしょうか?
「将来性のある経営をしていきたい」「利益を増やしていきたい」「後継者がいなくなる状況を避けたい」そんな課題を解決するポイントは、「見える化」にあります。



農業会計・農業簿記・農業収支計算で見える化

農家の約98%が家族経営である以上、その経営形態を変えていくのは容易ではありません。
「これまでのやり方」をただ踏襲するのではなく、現状を把握するために、帳簿をつけ、農業収支計算をおこなうことが大切です。
「経営状況を改善させる」「事業拡大」というと、難しい知識が必要で素人には手がつけられないと思う人が大半ですが、そんなことはありません。

昨今はパソコンやタブレットに詳しくない、使い慣れていない人でも直感的に操作できるエクセルの農業会計ソフトや農業簿記、農業収支計算ソフトがあります。
また、市町村からも農業収支計算ソフトが提供されています。

農業会計、農業簿記フリーソフトの選び方

一般に用いられる会計手法は「商業簿記」ですが、農業を営んでいる場合、ほかとは勘定科目が異なるため、農業簿記を用います。
そのため、農業簿記に対応したソフトやエクセルのテンプレートを選びます。

その際、複式簿記を採用し、青色申告に対応しているものは便利です。
減価償却制度の改正などに対応しているものや慣れていないと難しい償却費の計算や固定資産台帳が自動的に作成されるフリーソフトも数多くあります。
活用できるものはうまく活用し、農業経営に集中できる環境づくりをしていきましょう。

紙で帳簿付けするのになれている人も多いかもしれませんが、電子帳簿保存が主流になりつつあるため、早めにパソコンでの帳簿付けになれておきたいところです。
エクセルの農業簿記フリーソフトであれば、すでにテンプレートでできているため、簡単に使い始めることができます。

農業簿記とは

農業会計、農業簿記の特徴は主に、4つあります。まず、勘定科目が一般的な商業簿記と異なることです。
棚卸しをする際の会計処理方法や生産資産の管理、確定申告の際の書類様式です。

帳簿付け、勘定科目

農業簿記の場合、一般的な商業簿記とは異なる勘定科目を用いて帳簿付けを行います。
たとえば「農産物」「飼料費」「肥料費」「農薬費」「種苗費」「貯蔵品」「仕掛品」などです。

農業簿記は、個人事業主・農業法人共通で、農産物を生産・販売している事業主を対象にしています。

棚卸し

棚卸しとは、毎年年度末時点で、手元に残っている資産や在庫の確認をおこない、金額を計算し帳簿につけることです。
その期の経営成績や財産の状態について、確定作業をおこなうために必要な作業です。

農業簿記の場合、原価計算や生産している作物の種類ごとに、大きく4つにわけて会計処理をおこないます。
商業簿記など、一般的な簿記との最大の違いといえるでしょう。
・農産物:販売目的で生産(収穫済み)し、未販売で在庫となっているもの。
・仕掛品:栽培中、育成中の物品のこと。未収穫の農産物や販売目的の飼育中の動物など。
・原材料:種子や飼料、農薬など、生産目的のために消費される物品。
・貯蔵品:燃料や包装材料など、生産や販売目的以外のために貯蔵されている物品。

生物資産の管理

りんごの木や栽培中のいちごの苗、搾乳牛など、生産活動をしている果樹や家畜は、固定資産として減価償却をおこないます。
借方:減価償却費 貸方:生物

これらの果樹や家畜の生産活動を開始するまでにかかった育成費用を「固定資産の取得価額」として計算します。
毎年の年度末には、育成期間中の果樹や家畜に必要となった費用(肥料やエサ代など)の合計を「育成仮勘定」として振り替える処理をします。

このあたりの勘定科目や、減価償却の考え方は簿記の知識がないと難しくなります。
そのため、どんぶり勘定の会計処理になってしまったり、白色申告で手続きをしていたり、税理士を新たに雇う必要が出てきたりします。
しかし、エクセルの農業会計ソフトなどがあれば、そういった知識がなくてもかかった費用を入力していくことで管理できるため、有効に活用しましょう。

農業専用の確定申告書類

確定申告は、1月1日〜12月31日までの1年間で得られた収入から所得や課税所得、所得税を算出・確定させ、翌年の定められた期間内に申告・納税する手続きのことです。
個人事業主、法人ともに、農業所得が発生している場合は対象となります。

農業を営む人が確定申告をする場合、”農業専用”の確定申告書類様式で申告をおこないます。
農業による所得は、それ以外の所得と分け記載する必要があるため、農業簿記・農業会計ソフト、農業収支計算ソフトを用いて帳簿付けをします。

確定申告には、白色申告と青色申告があり、帳簿付けがシンプルなのは白色申告、複数の帳簿管理が必要なのが青色申告です。
青色申告の場合、決算書類である賃借対照表や損益計算書を作成できる帳簿が必要となります。
複式簿記での記帳が必須となりますが、65万円の特別控除をうけることができます。(白色申告は10万円の特別控除にとどまります)

有料のソフトもありますが、「機能が多すぎて使いにくい」「パソコン初心者にはわかりにくい」こともあるようです。
エクセルのフリーソフトでも帳簿管理できるものが数多くあるため、まずはそちらから試してみるといいでしょう。

変わりつつある家族農業経営のあり方

昨今、普及しつつある「家族経営協定」は、労働時間や役割、月給制の導入といった取り決めを家族間で明文化する取り決めです。
従来の家族農業経営による「生活と経営があいまい」という不満を改善するひとつのやり方です。

また、働く環境が整うことで、社会問題化している後継問題の改善にも期待ができるでしょう。
・節税対策
・収入増大、満足のいく収入
・将来への備え
・損失回避
・純資産の増大
・規模を拡大した経営
・労働条件の改善(賃金、時間、環境など)

上記に上げた項目を目指す家族農業経営者であれば、家族経営協定の締結や帳簿付けによる収支の見える化などは経営改善に期待が見込めます。

月給制を導入している家族農業経営の割合は46.6%とおよそ半数に達しています。
家族経営協定により、働く人の権利が従来よりも守られるようになります。
さらに、経営者がおこなう役割と、従業員が担う役割が明らかになります。
経営者は事業が成長していくために農業会計や収支計算をきちんとおこない、戦略的に経営していくことが可能です。

将来の見通しが立つことで、設備投資や家族以外の外部人材の活用、事業規模の拡大など、さまざまな選択肢が視野に入ります。
そういった家族経営の多様化はプラスの側面を生み出しますが、一方で、従来では観られなかった農業会計上の問題が生じることもあります。
そのため、今後を見据え、エクセルで収支計算や帳簿付けをしていくことが重要になります。

 

タイトルとURLをコピーしました