勤怠管理は、従業員の出退勤を記録し、労働時間を把握・管理することが求められます。タイムカードの記録保存の責任や勤務時間の管理方法について、法定労働時間と所定労働時間の違いを理解することが不可欠です。また、労務管理では給与計算や社会保険、税金の管理が含まれます。人事管理もまた、従業員解雇に関する規定を含む多岐にわたる内容が求められます。このページでは、勤怠管理や労務・人事管理について解説しています。

勤怠管理とは
勤怠管理とは、社員の出退勤や欠勤などを管理して、勤務時間を正しく遵守しているかなどを確認することです。
現在では正社員以外の雇用も多くなっているため、勤怠管理はシステム化しなくてはならない分野といわれています。
働き方や労働問題が大きく問われている現代において、従業員を雇ったら勤怠管理や工数管理をすることは必須です。
勤務時間の管理
勤務時間は、労働基準法によって定められています。
原則、1日で8時間、1週間で40時間以内です。
また、休日も週1日以上必要です(一定の場合には、1ヶ月または1年単位の変形労働制が認められる)。
この時間を超えて労働した場合は、法定時間外労働として残業代を支払う必要があります(労使間で36協定を結ぶ必要あり)。
そのため、勤怠管理や労務管理、時間管理、スケジュール管理をきちんと行わなければ、法律違反になります。
タイムカードの記録保存は会社の責任
会社で従業員の給料を計算するためには、タイムカードなどで、出勤時刻や退勤時刻などを正確に把握しておく必要があります。
特に、パート従業員が多数いる場合は、集計やシフト管理などを簡単にするためにも、その会社に合わせたタイムカードを用意しておいた方が良いでしょう。
しかし、タイムカードで出勤時刻や退勤時刻などを把握しておくのは、何も給料計算だけのためではありません。
厚生労働省が平成29年1月に策定した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、会社には、従業員の労働時間を適正に把握したり、時間管理したりする責任があるとなっています。
そこで、原則として労働時間の把握・時間管理にタイムカードなどの客観的な記録を使い、労働基準法に基づいて3年間保存します。
このように、タイムカードは重要な意味を持ちます。
タイムカードを使う場合は、その記録の保管方法まで考えるようにしましょう。
勤怠管理の基礎知識
労働時間の計算
アルバイトや正社員の労働時間の計算は、ミスが許されない計算です。
これは、労働時間の計算がもととなり、残業時間の賃金やアルバイトの給料などが計算されるからです。
ここでミスが発生してしまうと、アルバイトなどの生活に影響を与えてしまうこととなります。
そのため、労働時間の計算は簡単な計算であっても暗算などをしたりするのはおすすめしません。
また、簡単だからといって再計算しなかったり、給料計算日近くまで計算しなかったりなどもおすすめはできない方法です。
法定労働時間と所定労働時間
労働基準法で規定された労働時間が法定労働時間で、会社が定めた労働時間が所定労働時間です。
労働基準法によると、特例があるものの基本的には1日8時間、1週40時間を超える労働は原則として行えないとしています。
一方で、会社の就業規則などにより規定された、1日ないしは1週間の労働時間は「所定労働時間」と呼ばれています。
なお、所定労働時間は、法定労働時間の範囲内で決めなければなりません。
また、「1か月単位の変形労働時間制」というものも存在します。
1か月以内の平均した一定期間が、1週間当たりの法定労働時間を超えない労働時間であれば、法定労働時間を超えての特定週の労働や、8時間を超える特定の日の労働を認める制度です。
なお、1か月単位の変形労働時間制を導入するためには、1か月単位の変形労働時間制に関する規定を就業規則または労使協定で定めた上で、管轄の労働基準監督署に届け出しなければなりません。
フレックスタイム制というのは、始業と終業の時間をアルバイトなどの従業員が選べる制度で、この制度も実は1か月単位の変形労働時間制と同様の扱いとなります。
さらには、「1年単位の変形労働時間制」や「1週間単位の非定型的変形労働時間制」なども存在します。
法定休日と所定休日
労働基準法で規定された休日が法定休日で、会社が定めた休日が所定休日です。
休日の最低基準として、毎週少なくとも1回もしくは、4週間に4日以上の休日を与えなければなりません。これを、労働基準法で定められた休日「法定休日」と呼びます。
一方で、会社が定める休日を「所定休日」といいます。
このことから、毎週の週休2日制を導入している会社は、片方が「法定休日」で、残り一報が「所定休日」と区分できるのです。
「法定休日」に定められた日に労働することが「休日労働」となり、割増賃金の支払いが義務付けられています。また、「休日の振替」や「代休」などといった制度も存在します。
勤怠管理を無料で行う方法
タイムカードによる勤怠管理
勤怠管理を行う上でよく使われるのが「タイムカード」です。
社員やアルバイトが出勤ないしは退勤した時に、タイムスタンプを管理します。
一般的にはicカードと言ったカードタイプのタイムレコーダーが採用されています。
タイムカードであれば、社員やアルバイトそれぞれが出勤・退勤するたびにそれぞれで打刻などを行うので、忘れない限りもれがありません。
残業時間にも対応できるので、出勤管理から出退勤管理まで勤怠管理や工数管理を非常に簡単なものにしてくれます。
ただし、タイムカードは日々の出退勤管理としての勤怠管理となるので、給与計算等の際に勤怠表および勤務表・出勤簿などとしてまとめなければなりません。
タイムカードやicカードと言ったカードタイプは、出勤簿としては簡易的であり、それだけで給料計算できる書式のフォーマットにはなっていない場合がほとんどだからです。
そのため、労務管理上のツールとして使われていたこれらを、勤怠表および勤務表・出勤簿などといったexcel(エクセル)のテンプレートやフォーマットにまとめ直すことがほとんどです。
エクセルシフト表による勤怠管理
タイムカードやicカードと言ったカードタイプのタイムレコーダーはあくまでも、出退勤管理としての勤怠管理であり、どちらかといえば出勤簿としての役割が大きいツールです。
つまり、こうしたツールは、事前の出勤管理や工数管理を行うことができず、あくまでも事後の出退勤管理として扱われるものだと言えるのです。
いつ、だれが、どこの日にシフトができるかという意味では、こうしたタイムカードやicカードと言ったカードタイプのタイムレコーダーではなく、「シフト表」や「勤務シフト」などのシフト管理をツールとしてスケジュール管理が行われます。
アルバイトなどはシフト表や勤務シフトにしたがってシフト管理・スケジュール管理され、勤怠時間の管理や調整が行われるというわけです。
そのため、シフト表などで行う勤務シフトにおけるシフト管理は、勤怠管理や工数管理、労務管理にも直結しているシステム・ツールだとも言えるでしょう。
こうした、「シフト表」や「勤務シフト」などのシフト管理は、多くの場合excel(エクセル)をテンプレート・フォーマットとした一覧表で管理されます。
excel(エクセル)をテンプレート・フォーマットとしたシフト表や勤務シフトなどのシフト管理は、プリントアウトして使用したり、クラウドを利用して共有したりするなど、さまざまな使い方やシステム・ツールがあるはずです。
なお、こうしたシフト管理として扱われるシフト表や勤務シフトと、勤怠表および勤務表・出勤簿などを見比べることで、出退勤の労務管理がより精密に行うことが可能となるはずです。
フリーソフトを使った勤怠管理
勤怠管理や労務管理、工数管理そしてスケジュール管理には、手軽で簡単なexcel(エクセル)によるテンプレート・フォーマットを用いた管理方法以外にも方法があります。
それは、勤怠管理や労務管理、工数管理そしてスケジュール管理が行える、ソフトウェアやアプリをシステムとして導入することです。
ソフトウェアであれば、難しい操作も必要ありませんし、excel(エクセル)による困難な計算式も必要ありません。
ソフトやアプリが計算を勝手に行ってくれるので簡単です。
しかも、ソフトウェアやアプリによっては、従来使用していたexcel(エクセル)などのテンプレート・フォーマットに対応・書き出ししてくれるシステムも存在します。
労務管理とは
労務管理とは、従業員の労働条件や労働環境の整備を行う業務です。
具体的には、以下のような業務を行います。
- 就業規則の作成
- 労働契約手続き
- 勤怠管理
- 給与計算
- 福利厚生
給料面の管理
法定時間外労働には、割増賃金を支払わないといけません。
時間外労働の割増率は通常2割5分以上、1か月60時間を超えるものに対しては5割以上、休日労働の割増賃金の割増率は3割5分以上です。
そのため、勤怠管理や労務管理、時間管理、スケジュール管理を正確に行わないと、従業員とのトラブルの基となります。必ず、厳密な勤怠管理を行いましょう。
給与計算の前準備
給与明細書は、どんな会社でも各項目については同じような項目が並んでいます。
主に勤怠項目欄、支給項目欄、控除項目欄、支給額欄という4つに分けられますが、中でも勤怠項目欄を完成させないと、給与計算は始まりません。
出勤簿やタイムカードは早めにチェックすることがおすすめです。
うち漏れ、二重打ちはよくあることと思い、ほかの事前準備と一緒に早急に行いましょう。
ほかの事前準備とは、異動や扶養家族の増減といって人事情報の管理、昇給・降給、通勤手当など支給項目の変更手続き、そして社会保険料や住民税の変更といった控除項目変更手続きのことです。
税金のかかる給与とかからない給与
給与の計算方法は、月給・日給・時給によって異なります。
月給なら簡単で、基本給は毎月変わることがありません。
日給なら出勤日数×日額、時給なら出勤時間×時間給という風に計算されます。
出勤日・出勤時間で計算するときに重要になってくるのが手当についてです。
手当とは、通勤手当や旅費手当など、会社で自由に決められる支給項目のことです。
その手当についても、月単位で計算してよいものと、支給項目に該当する作業時間を単位とするもの、賃金を割り増しして計算するものなど、さまざまな種類があります。
また、手当の中には源泉所得税のかからない非課税扱いのものがあります。
さらにその中でも、ある一定の基準を超えると課税となる場合もあるため、支給項目および給与計算については、各個人で慎重な計算が必要となります。
非課税給与となる手当の一例
税金がかからない手当の代表は通勤手当でしょう。
- 電車などの交通機関、有料道路を利用する人(上限10万円)
- 自家用車や自転車を使用する人
- 交通機関+自家用車や自転車などで通勤する人
②の場合、通勤距離が片道2km未満の場合は自家用車・自転車どちらの通勤でも全額課税されます。それ以上の距離の場合、段階的に非課税限度額が上がる仕組みです。
次に代表的な非課税給与となる手当は旅費手当などが考えられます。
旅費手当とはいわゆる出張にかかった費用などが一般的ですが、内訳は以下のようになっています。
- 出張旅費
- 就職・退職・転勤のために転居するときの旅費
- 死亡退職者の遺族が転居するときの旅費
- 災害などにより通勤時に交通手段が利用できず、他の交通機関を利用した場合、または宿泊した場合に支給する実費交通費・実費宿泊費
上記はすべて、非課税給与となる手当となります。
これらのほかにも、宿日直手当、夜食代、見舞金などが非課税給与となる手当として挙げられます。
ノーワーク、ノーペイの原則「遅早控除」「欠勤控除」
基本的に給与明細書にはプラスの金額が記入されていますが、この遅早控除と欠勤控除に関してはマイナス、つまり基本給から差し引かれている控除になります。
遅早控除とは、遅刻・早退により定められている勤務時間より勤務できなかった分の時間給を差し引くこと、欠勤控除は、欠勤した日数分を差し引くことです。
ノーワーク・ノーペイの法則というものがあります。日本語に訳すと「働かざる者食うべからず」です。日給と時間給の場合は、働いた分だけ計算される仕組みですので、そもそもこの控除を見たことがないという人もいます。一方、月給制の方は、毎月の固定報酬の中から遅刻や早退、欠勤があればこうした控除を利用して減額されるという仕組みなのです。
会社は減額し放題?減給の限界
会社によっては、「遅刻3回は欠勤1回に相当する」などと就業規定を設けているところがあります。しかし、実はこれは労働基準法により違法となる可能性があるので、経営者は注意が必要です。
労働基準法による制限はこのようになっています。
・一回の事由に関し、その労働者の平均賃金一日分の減額
・総額(すべての減給事案)では一賃金支払い期の10分の1
これらを上回る減額は「減給の制裁」ペナルティに当たります。例えば先ほどの例を見てみると、遅刻3回(1事案)に関し平均賃金一日分の半額を超えて減給することになる可能性が高く違法の扱いとなります。
社会保険料とは
遅早控除と欠勤控除のほかに、給与から差し引かれるのが社会保険料です。この社会保険料では給与のことを報酬と呼び、その報酬月額を元に計算します。
・控除するのは前月分の保険料
従業員が負担する社会保険料については、常に前月分の月額報酬で計算したものになります。ですから、4月入社した従業員の社会保険料は次の月の5月の給与分から引くことになります。また、あくまでも月単位で徴収することが定められているため、入社日がたとえ30日だろうとその月の社会保険料が発生することになります。
・退職したときはどうなるのか?
退職日の次の日が社会保険の資格喪失日となっているため、その月の社会保険料は徴収しない仕組みです。月の途中で退職することになった場合も、その月の保険料は必要ありませんが、前月分の保険料は控除されます。月末最後の日に退職してしまうと、次の日、つまり翌月の一日が資格喪失日になるため、その月の社会保険料が発生してしまいますので注意が必要です。
毎月変動する雇用保険料
健康保険や厚生年金保険と違い、給与支払いのたびに計算しなくてはならないのが雇用保険料です。社会保険料などでは給与のことを報酬と言いますが、雇用保険の場合は賃金と言います。
・高年齢者は雇用保険料を免除される
満64歳に達した従業員は、雇用保険料が免除されますが、保険年度の初日、つまり4月1日に満64歳に達していないといけません。ですので5月に64歳を迎えたとしても、その年は以後も雇用保険料を控除し続けなければいけませんので注意しましょう。
人事管理とは
人事管理とは、従業員の基本情報や部署履歴や役職履歴、採用から退職までの情報管理などを行うことです。
人事管理は、賞与や昇給の判断に使われたり、退職金の計算に使われたりと、従業員の管理の基礎となります。
会社にとって社員管理や従業員などの人事管理(人事労務管理)はかかせないものです。
勤務表によるシフト管理はもちろん、年休管理などの必要性も出てきます。
また、人間の有無を確認するためにも社員台帳も必ず必要なものです。
有給休暇ひとつにしても、有給管理台帳や、有給休暇管理表などを作らないと難しくなりますし、社員の有給日数(有給管理)なども必要です。
「ノーワーク・ノーペイ」とは
人事管理(人事労務管理)で勤務表等のシフト管理を行ううえで、覚えておいて欲しいのが基本は「ノーワーク・ノーペイ」の原則があるということです。
社員管理はもちろん、社員台帳にふれる人はしっかりと認識しておかなくてはいけません。
従業員に支給されている給与はその労働の対償として支払われているものです。
そのため欠勤・遅刻・早退などの労働力がないときは、その分の給与がカットされるのは当然のことでもあります。
勤務表などのシフト管理のうえで、時間通りに出社している社員と同じでは不満も生まれてしまいますし、そもそも人事管理(人事労務管理)とはいえなくなります。
ノーワーク・ノーペイは、時間給制・日給制・月給制などさまざまな人が対照になります。
会社の人事管理(人事労務管理)のうえで、就業規則がどのようになっているのかも確認しておきましょう。
就業規則の把握も、社員管理や社員台帳にとって欠かせないものです。
ただし、人事管理(人事労務管理)のうえで、欠勤控除などが法律によって定められているわけではありません。
勤務表やシフト管理のうえで、会社の就業規則によって計算することになります。
勤務表やシフト管理に多大な影響が出てしまうストライキについても、従業員が仕事をしなかった場合は、人事労務(人事労務管理)の視点からみてもノーワーク・ノーペイの扱いになります。
勤務表やシフト管理のうえで、不当労働行為となります。
欠勤や遅刻、早退、ストライキなど社員管理をしっかりと行い、社員台帳をつけて記録しておくようにしましょう。
社員台帳は定期的に更新することも社員管理では必要です。
例えば結婚して名前が変わったときに、社員台帳の書き換え、更新などの社員管理になります。
従業員解雇に関する規定
本来、人を雇うよりも人を解雇するときの方が慎重にならなければなりません。
というのも、会社側から一方的に解雇を行うと、労働基準法で罰せられる可能性があるからです。
従業員を解雇してはいけない期間
労働基準法で定められている「従業員を解雇してはいけない期間」は2つ。
① 業務上の災害による傷病のための療養期間およびその後30日間
② 産前産後による休業期間およびその後30日間
この期間だけは、たとえ従業員が横領を行っていたと発覚したとしても、解雇できません。
ただし、この期間でも解雇できる例外もあります。
それは、「大規模な火災や天災などで事業の継続が不可能になった場合(事業の部分的な縮小や一時的な休止を除く)で、その理由を労働基準監督署長が認めた場合」です。
また、①のみ適応できる例外として、「療養開始後3年を経過し、平均賃金1200日分の打切り補償を支払った場合」があります。
労働基準法の規定で突然の解雇は認められない
上記以外の期間であれば、会社側から解雇を言い渡すことは可能ですが、それも30日以上前に予告することが義務づけられています。
しかし、どうしてもすぐに解雇したい場合、例えば、すぐにでもその従業員を解雇しないと、社内崩壊が起きてしまう…そんな場合は、予告する代わりに30日分以上の平均賃金を支払うことで、即日解雇することが可能になります。また、両方を併用することもできます。